19日に東京品川にあるアートスフィアで、『42丁目のキングダムス』を観劇してきた。

この作品は、12年前にすでに公演されてて今回は再演とのことで初演時と同じ出演者は主演の布施明さんと岩崎良美さんの二人だけ。

まず、この出演者が全員二役以上を演じるということでさぞかし舞台裏は早替わりの連続ですごい忙しさだと想像してしまう。

布施さんは髪型や服装などそんなに変化してなかったけど、他の役者さんたちは別の役柄とは髪型から服装、台詞の言い回しまで全く違うから誰なのかわからない人もいて、プログラムで役の確認までしてたものね。

今回のぶんちゃんの役どころは、布施さん演じる元売れっ子歌手の別れた奥さんで今でもマネージャーとして傍にはいつも付いてるという女性を演じてて、もう一つの役はその歌手のオッカケをしてるというお嬢様のお母様で和服で髪型も変えての登場。

お芝居中に、布施さんが「似てるなぁ・・・」とそのお母様を見て言うところがあってお客様から笑いが起こっていた。

布施さん演じる歌手緑川ひろしは、12年前に<いちじく街道>という曲が大ヒットしてるけどその後はヒット曲に恵まれず今は地方のキャバレー周りをしてる状況。

その大ヒットしたとき、同じ事務所で売れっ子歌手だったぶんちゃんがその緑川のトリコになってしまって結婚したという設定だった。

別れてもマネージャーとしていつも傍にいるのは、「この人は実力はあるのだから、きっと大物になる、してみせる」と思ってるから。

緑川の傍には他にも付き人の岩崎良美さん演じる桜子、バンドのアキラ、司会を取り仕切る田口の3人がいる。

この3人もそれぞれ夢を抱いている。
桜子は「いつかアイドル歌手に」、アキラは「自分のバンドを持ってバンドマスターに」、田口は「俳優に」と。

真冬の北陸のキャバレーに一行は、バスに乗ってやってくる。

そのキャバレーに緑川がヒットを飛ばしてた事務所で友人で、しかもぶんちゃんに心を寄せてたという大田黒、今ではニューヨークで事業家として成功しててブロードウェイの演出家を連れてきて、緑川に「あなたは実力のある人なのだから、ブロードウェイでやってみませんか」と持ちかける。

緑川一行は、てんやわんやの大騒ぎ。
ここで一幕の幕が降りるのだけど、キャバレーの舞台で緑川が歌うシーンはなんだか五木ひろしのモノマネみたいな格好して少しオチャケて歌うので笑ってるお客さんも数人はいたけど、私はこのシーンが来ると「どうしてこんな歌でヒットできるのよ」と退いてしまってたから、幕が降りた後、何だかつまらなさで一杯で席から立ち上がれなかった。
ぶんちゃんの舞台を観て、こんな感想を持ったのは初めてのことだった。

二幕目に期待して席に付いていた。

ところが、二幕目の幕開きがなんとブロードウェイで成功してる夢の世界からの幕開き。

だから、布施さんをセンターにして向かって右横にタキシード姿の岩崎さんとオッカケの仲代さん、左横には同じくタキシード姿のぶんちゃん!
この4人が歌って踊って。 こうでなくっちゃ!

この4人のダンスで一番カッコよかったのは、言うまでも無くぶんちゃん!

他の3人は歌手活動が主だから(仲代さんは違うけど)、手先や足の上げ方がいまいちでメリハリが無かったけど、ぶんちゃんは手先まで心が入ってるように感じたし、足の上げ方なんてもう横の布施さんの頭に届くくらい上がってたものね、それに体全体のラインがすごく綺麗。
こんなに舞台中にぶんちゃんのダンスを観られるのは、退団後初めてくらいだったからもう嬉しくて嬉しくて。

2人がはけた後にぶんちゃん一人で、布施さんが歌ってる横から後ろを回って袖に入るまで踊って行くのは観ててもう目がハートになってるのを感じてた。

これで一幕までのつまらなさは、一気に吹き飛んで行ってしまった!

二幕は一幕のできごとが、みんな夢だったということに・・・。

キャバレーはすでに潰れてて無くなってる、乗ってきたバスもここ数日の雪で運行中止してる。

みんなが持ってる夢が、今までの登場人物を作っていたということに・・・・。

このことを証明したのが、マネージャーでもあるぶんちゃんで、ニューヨークの大田黒に電話したら彼は日本には来ていなくてニューヨークに居るとのこと。

みんな、がっかりして散り散りに。

緑川の父は、ハーモニカ演奏が大好きだったから仕事を辞めてまで売れないハーモニカ演奏を続けていて、その父の姿を子供ながらに嫌だったがために自分は生活を捨ててまで自分の夢を実現させるのが怖かった、だからできるかぎりの生活ができるキャバレー周りに甘んじていたのだと・・・。

最後まで付いてたぶんちゃんも、「そんなお父様に文句も言わずにいつも付き添ってたお母様は、そういうお父様を愛しててお父様から必要とされていたからなの。 あなたも私を必要だと言って」とすがり付くけど、緑川の反応は無し。

だから、ぶんちゃんも傍を離れて行ってしまう。

一人になった緑川は苦しみもがくけど、そこで見つけたのは「俺にはお前が必要なんだ! これでは、何も始まらないここで終わってしまう」と。

翌朝、バス停に一人座ってるところへ皆が戻ってきて「あなたと一緒に付いて行くわ」と。緑川も「さあここから皆で出発だ!」と。
 
バスに乗りながら、皆で歌う歌でこの作品が私の中でやっと理解できたね。

それは
この国に住む者は 心清らかにして、過去を振り返ることなく、決して傷つくこともない、だけど時々頭をもたげる、みんなこれでいいのかと。
この国に住む者には 心優しきキングダム、永久に崩れることない堅い絆のキングダム、今日もまた城壁の中から笑い声が聞こえる。

この歌はフィナーレでも全員で歌い、何回も何回も繰り返すから自然とお客さん全員から手拍子が始まり楽しい気分で幕が降りた。

私はこの歌の<城壁の中の笑い声>という台詞が耳にこびりついて、こう思っていた。

囲いの中で現実に甘んじて生きていて楽しいか?楽しくはないでしょ。それなら夢を、たとえ叶わなくても夢を持ち続けてはどう?ってね。

この作品には、こういうメッセージがあるんだとね。

もう来年に再演が決まってるんだって。

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