梅田コマで東宝の『エリザベート』を観劇してきた。

3年前に初演を中日劇場で観劇したんだけど、そのときの印象は「これだったら宝塚のほうがいいな」と思っていたので、再演だから前作と同じだったら観るのはよそうと思っていたんだけど、「ミュージカル」という月刊誌を定期購読しているのでそこで今回の『エリザベート』の特集が組まれていてそれを読んだら、前作とは別物をやってる感じとそれぞれの出演者が言っているので、それとあるHPで今回の『エリザベート』の演劇評を見て、これだったらぜひ観てみたいと思って足を運んでみた。

やはり今回はすごく追加されたシーンや台詞や歌が多く、東宝ので私が一番嫌いだった精神病院のシーンがだいぶカットされていた。

エリザベートの初めの登場の仕方がなんと棺の中からの登場。
これには少し仰天してしまった。

でも今回一番私が感じたのは、トートのエリザベートに対する愛に狂気を持たせヨーゼフの愛には人間愛と包容力を持たせて、二人の愛の形が相反するものだと客席にアピールしたことで『エリザベート』がより理解しやすくなっていたことだった。

今までのは宝塚のでも、こんなにカッコイイのにただ死の皇帝というだけで、エリザベートがトートの愛を受け入れられないのかなとかルドルフの「僕とママは鏡だから・・・・」というのがいまいち理解できず、そのほかにもいろんな点で理解できないところが多かったけど今回の演出の仕方はそれをすべて理解できるようになっていた。

トートの愛に狂気を持たせたことで、エリザベートがトートが出現するたびに恐怖におののき「あなたとは踊れない」と拒否しつづけるのもやっと理解できたし、ハンガリーの戴冠式でトートが変装して戴冠するのでなく、二人を馬車に乗せてその馬車のムチを打っているのがトートなのでこの二人がトートに操られているんだというのが伝わってきたし、ルドルフの幻の戴冠式でもルドルフを同じように馬車に乗せてムチを打っているのでルドルフもトートに操られているのがストレートに伝わってきた。

今までは宝塚のでもトートは美化されていて恐怖感を全然感じなかったので、トートが出演していないシーンでは「もう、早くトートを出してよ」と心の中で催促していたけれど、今回はトートが出てくるたびに私の心はエリザベートと同じく恐怖におののいていた。

ルドルフの少年時代のシーンがすごく増やされていて、台詞も歌も増えていたので幼年期にエリザベートに自由奔放に育てられていたから、エリザベートがルドルフを置き去りにして旅を続けていたのでおばあ様やヨーゼフに勉強や剣術を押し付けられて嫌がっているのがすごく伝わってきた。
このシーンがあったから「僕はママの鏡だから・・・・」というのも理解できたし、青年になってクーデターに参加したのも理解できた。
前作や宝塚のはこのシーンは無いから、ルドルフの苦悩するのもよく理解できずにいた。

私が『エリザベート』で一番好きなシーンは一幕のラスト、エリザベートが鏡の間から純白の素敵なドレスでスポットライトを当てられて登場するシーン。
ここは何度観ても「うわぁ、きれい!!」と息を呑んでしまうほどエリザベートが輝いて見える。

今回のはヨーゼフとエリザベートがどうして寄り添えないのかも台詞が増えたから理解できたし、ハンガリーでエリザベートが生きがいを見つけたというのも追加された台詞から理解できて、だからトートが「お前に生きる意味を与えてしまった」と後悔するのもやっと理解できた。
今までの『エリザベート』では、トートがこの歌を唄って後悔するのがいまいち理解できずにいた。

ラストシーンもエリザベートが「黄泉の世界こそ私らしく生き続けられる世界なんだ」と言って、トートの胸に飛び込んでいってトートが「黄泉の世界へあなたを招待します」と棺の中にエリザベートを収めて幕が降りた。

宝塚のラストシーンは二人が手を取り合って昇天していくのだけど、このほうが二人の関係を理解しやすかったように思う。

宝塚は宝塚という特別な世界の『エリザベート』で、主役はあくまでトートだからこういうラストシーンも理解できる。

今回の東宝の『エリザベート』はなんとカーテンコールが6回もあって、そのたびに出演者全員が笑顔で手を振るのだけど、トートは笑顔も無し手も振らないでクールさを最後まで通していたのが印象的だった。
でも最後の2回はお客さん全員のスタンディングオーベーションとなり、拍手が鳴り止まず一番最後にエリザベートの一路さんとトートの山口さんがスタンディングオーベーションの中、二人が仲良く手をつないでの登場。
そのときトートの山口さんが地の山口さんにもどって笑顔で両手を振ってくれたので、お客さんから笑いが起こった。

私もカーテンコールのたびに「こんなに素敵な舞台をありがとう」という出演者に対して感謝の気持ちから、目から涙がこぼれてきてしまった。
今までお芝居の途中で涙することはあったけど、お芝居の間は涙するシーンはあまり無かったのに、カーテンコールで涙したのは舞台を観るようになって初めてのことだった。

それだけ私が今年観た舞台の中でも一番最高の舞台だった。

今回の作品を観て東宝の『エリザベート』と宝塚の『エリザベート』、二つの『エリザベート』ができたんだという思いがした。

コメント

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

最新のコメント

この日記について

日記内を検索